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規格外な野菜買い取り新商品 「もったいない」出発点、郡山の矢吹さん

08/31 08:25

規格外の野菜を加工した商品を持つ矢吹さん。「食材を大事にし、子どもたちには野菜本来の味を知ってもらいたい」と話す
粒の形などが悪く、規格外品となったトウモロコシ(矢吹さん提供)

 郡山市の飲食店「逸品の店 勇菴(ゆうあん)」のオーナーシェフ矢吹勇逸さん(46)は、商品として出荷できない規格外の有機栽培の野菜を農家から買い取り、スープやドレッシングに加工して消費者に届けるプロジェクトを始めた。将来の子どもたちのために豊かな食を守ろうと、矢吹さんは「農家が野菜を無駄なく生産できる環境をつくり、子どもたちに野菜本来の味を知ってもらいたい」と意欲を語る。

 取引先農家の悩み

 同店は県内の生産者が作った食材を中心に使って料理を提供している。「温暖化や水不足で野菜に影響が出ている。形や見栄えが悪く、出荷することができない」。プロジェクトのきっかけは昨年夏、取引先の農家から聞いた悩みだった。

 出荷できない野菜は肥料にすると教えられた。農薬を使う栽培法より手間暇のかかる有機栽培の野菜が売り物にならないことを知って、「もったいない」と感じた。「味のポテンシャル(潜在能力)は一緒。料理人として形を変えて販売できないか」。本来は売り物にならない野菜を買い取って加工し、インターネットで資金を集める「クラウドファンディング」を通して販売することを発案した。

 今回使用したのは、味に問題はないが、形が悪いなど規格外となったトウモロコシ、ニンジン、ビーツの3種類。トウモロコシはスープ、ニンジンとビーツはそれぞれドレッシングに仕上げた。コーンスープは2種類のトウモロコシを使って果肉も入っている。ニンジンのドレッシングは皮ごと使用。ビーツのドレッシングはポリフェノールを豊富に含んでおり、いずれも野菜本来の味を引き出すように加工した。矢吹さんは「違う飲食店でも同じように、食材をロスなく使用する動きが広がってほしい」と期待する。

 野菜嫌いの子ども

 プロジェクトにはもう一つの思いが込められている。それは、取引先の農家から聞いた「最近は野菜嫌いの子どもが多い」の声に応えること。子どもたちに野菜本来の味を知ってもらおうと、今回の商品はスープやドレッシングなど、野菜を食べやすい形に加工する工夫を施した。「子どもたちが野菜をたくさん食べられるような環境にできればうれしい」と矢吹さん。これからも農家と子どもたちの間に立って、野菜のおいしさを伝え続ける。(津村謡)

 寄付額応じ賛同者にリターン品

 加工品の詳細は、クラウドファンディングのサイト「CAMPFIRE(キャンプファイア)」に掲載されている。寄付額に応じ、賛同者へのリターン品としてコーンスープやドレッシングが付く。集まった資金はプロジェクトのために使われる。問い合わせは「逸品の店 勇菴」(電話024・953・8728)へ。

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