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手話で伝える多様性社会 聖光学院、パフォーマンス甲子園出場へ

09/18 10:00

「手話も一つの言語。劇を通じて手話に興味を持ってもらいたい」と話す曳地さん(右から2人目) =聖光学院高

 手話劇で多様な性の在り方を表現したい―。聖光学院高(福島県伊達市)手話部は22日、鳥取県米子市で開かれる第11回全国高校生手話パフォーマンス甲子園に出場する。男女だけでなく、性的指向や性自認によって多くの定義がある社会を伝える内容で、部員たちは初のひのき舞台に意欲を見せる。

 「私は男の子の服が好きなの!」。大会を目前に控え、放課後のひっそりとした校舎の一室で、本番で演じる劇の流れを確認するなど練習に励む部員の姿があった。部員13人の半数以上が部活を掛け持ちし、週3日に限られた練習時間の中、細かい手話表現を磨き上げている。

 部員たちが演じるのは無声音の創作劇「個性の尊重」。男の子のファッションが好きな女の子が偏った考えを持つ家族と衝突する中で、ジェンダーレスへの理解と多様性の尊重を訴えた作品だ。台本やせりふに合う手話も生徒自身が調べて作り上げた。人物の心情に合わせて手話の動きに強弱を入れたりリアクションを大きくさせたりして、多様性について悩む様子を分かりやすく表現した。主人公役の斎藤美羽(みう)さん(2年)は「多いせりふでも言葉が片言にならないよう、単語と単語のつながりを意識している」と心がける。

 同校手話部は2022年度に、普通科福祉探究コースが手話を授業に取り入れたことをきっかけに有志の生徒らで発足。未経験者も指文字や手話しり取りで楽しみながら語彙(ごい)力を増やし、”甲子園出場”を目標に練習に励んだ。

 「手話も一つの言語」

 外部講師で、ろう者の根本和徳さん(31)は「耳が聞こえる人は手の動きだけに集中してしまう。ろう者と健常者の違いをどうやったら身に付けられるのか、ハングリー精神で頑張っている」と手話指導について触れる。「うなずきや肩、眉の動きも使って、ろう者も親しみが持てる表現になってきた」と評価する。創設メンバーで部長の曳地愛来(あいら)さん(3年)は「手話も一つの言語。劇を通じて手話に興味を持ってもらいたい」と最初で最後の大舞台に気合十分だ。(小幡あみ)

    ◇

 全国高校生手話パフォーマンス甲子園 ろう者とろう者以外の者が互いを理解し、共生できる社会の実現や手話言語の魅力を多くの人に知ってもらおうと開催。「演劇・コント・ポエムなど」「ダンス・歌唱」の2部門で手話言語の正確性や伝わりやすさ、パフォーマンスを審査する。全国58チームから応募があり、動画の予選審査を通過した計16チームが本大会に出場できる。


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