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デブリ採取、作業再開見通し立たず 調査に数カ月の可能性

09/19 07:40

装置の先端付近にあり、映像が送れなくなったカメラ2台(上段)を含むカメラ4台で撮影した過去の映像。15日までは正常に作動していた=10日(東電提供)

 東京電力福島第1原発2号機の溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出しが再び中断した問題で、東電は18日もカメラの復旧に向けた確認作業を続行したが、不具合の原因特定には至らなかった。作業再開の見通しは立たず、場合によっては調査などに数カ月単位の長期を要する可能性も出てきた。短期間で2度にわたり作業が中断され、取り出しの実現性が危ぶまれる事態になっている。

 東電によると、トラブルは17日午前6時ごろの作業開始時に判明。採取用のパイプ型装置の先端近くに取り付けたカメラ2台の映像が送れなくなった。先端から離れた場所には別のカメラ2台が設置され、正しく作動している。4台はいずれも原子炉格納容器内にある。装置は15日に動作確認したのが最後で、当時はカメラ映像に異常はなかった。

 18日は格納容器の外で作業員がカメラの通信ケーブルの接続や通電状況を調べたが、異常は見つからなかった。現時点ではカメラと通信のどちらに原因があるかも判然としない。19日も別の箇所のケーブルを確かめる。

 「ケーブル故障」「結露影響」 専門家見解

 カメラは高い放射線量に耐えられ、デブリがある格納容器内でも1カ月は正常に作動する性能だという。このため不具合の原因を巡って、専門家からはさまざまな見方が出ている。東京大大学院の岡本孝司教授は(原子力工学)は「2台のカメラがほぼ同じタイミングで故障する可能性は低く、電源ケーブル側の故障が疑われる」と指摘した。格納容器内は常に注水しているため湿度が高く、ある政府関係者は「結露で電気系統の不具合が起きた可能性がある」との見方を示した。

 最長22メートルの装置はほぼ全て格納容器や途中のパイプに押し込まれており、2日間の確認作業は外側の通信機器のみを対象とした。しかし「できることに限界がある」(東電関係者)のも実態だ。仮に装置を取り出して造り直す場合、関係者は「取り出し作業再開に数カ月はかかる」と明かした。

 取り出し作業は8月22日に着手する予定だったが、人為ミスで約3週間延期された。原因究明と作業再開を経て、17日はデブリを実際につかむ初の試みが期待されていた。

 1カ月足らずの間に2度中断し、東京大大学院の開沼博准教授(いわき市出身、社会学)は「デブリの取り出しは明確に局面が変わるため、理解できない事態も発生する」と展望。「廃炉作業は試行錯誤の連続で進む。今回のミスは冷静に受け止める必要があるだろう」と語った。

 デブリは1~3号機に推計880トンあり、取り出しは廃炉の最難関とされる。今回は3グラム以下のデブリを採取する計画だが、21年以降、延期が相次いでいた。

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