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伝統工芸に「かわいい」を…大堀相馬焼に新しい風 浪江の協力隊・釣谷さん

09/27 08:35

生活を彩るような作品を作り、大堀相馬焼の魅力を広めたい」と語る釣谷さん

 浪江町地域おこし協力隊の釣谷華子さん(28)は、同町大堀地区に伝わる伝統工芸品「大堀相馬焼」に新たな風を吹き込む作品作りに取り組んでいる。花の模様やカラフルな絵付けを施したかぶとなどを制作し「生活空間を彩るような作品で大堀相馬焼の魅力を広めたい」と意気込む。

 かぶとは7月中旬にパリで開かれた世界最大規模の日本文化の総合博覧会「ジャパンエキスポ」に展示するために作った。県内の工芸家が「福島から、KAWAII KOGEIを、世界へ」をテーマに出展した。かぶとの素地は、ろくろ職人の吉田直弘さん(28)が手がけ、釣谷さんが絵付けを担当した。「日本の伝統工芸品に”かわいい”を落とし込むのに苦労した」と釣谷さん。アイシングクッキーのように、粘土で模様を描いたり、カラフルなパステルカラーで絵付けをしたりするなどのこだわりを見せ、自分らしい”かわいい”を表現した。

 横浜市出身の釣谷さんは大学卒業後、東京都内の銀行に3年勤めた。北欧独自の教育機関「フォルケホイスコーレ」で多様な学びに触れるため、2021年春にデンマークへ留学した。学校の授業で陶芸を学び、楽しさを見いだし「陶芸を仕事にしたい」と帰国。国内で未経験で働ける場所は多くなかったが、大堀相馬焼の技術伝承を目的とした浪江町地域おこし協力隊は陶芸初心者の受け入れに寛容だった。こうして22年10月に隊員として赴任した。

 大堀相馬焼は皿や湯のみなど日常で使われる陶器が多い。釣谷さんはアクセサリーやキャンドルホルダー、ひな人形などを作っている。「北欧は日常を楽しむ心を大切にしている。大堀相馬焼を通じて居心地の良い空間や時間を生み出したい」。デンマークで得た価値観を生かし、若き職人が道を切り開く。(小山璃子)

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