「就職したい企業ない」 東北の若年女性転出要因、知名度など重視

10/23 08:00

和田賢一教授

 桜の聖母短大の和田賢一教授(経済学)は22日、東北地方の若年女性転出の要因を分析したと発表した。大学卒業時に首都圏への就職を望む女性は企業規模や知名度を中心に就職先を選別しているとし「東北に就職したい企業がないため、就職希望場所に東京など首都圏を選ぶ傾向にある」と指摘した。

 東北の4年制大学の学生を対象に2021年に調査し、122人(男性27人、女性95人)から回答を得た。このうち東北への就職を望むと答えたのは男女とも7割程度、首都圏は2割程度。選択理由を「住みたい」「希望する就職先がある」の2択で尋ねると、東北は男女とも「住みたい」が7割強、「就職先がある」が3割弱で、首都圏は有意な差がなかった。

 就職先を選ぶ上での重視度を12項目ごとに5段階評価で尋ねると、首都圏希望の女性は、東北希望の女性と比べ「企業規模」や「知名度」を重視する傾向がみられたという。

 和田氏によると、23年は東北6県で2万5072人の県外転出超過が確認され、うち本県は6579人で最多。年代別では20~24歳が1万2542人と超過数の半分を占め、これも本県(3212人)が最大だった。東北から東京都への転出者数に占める女性割合は、宮城県を除く5県が道府県別の10位以内(本県は9位)で、東北の女性は東京への転出割合が高いという。

 和田氏は「従来の工場中心の企業誘致は大学新卒の就職状況とミスマッチで、就職時の若年女性の県外転出の抑制につながらない」と指摘。転出抑止策として〈1〉事業単位で本社機能を持つ企業や非製造業、研究機関の誘致〈2〉県内大学の県人枠の増員〈3〉上場企業の増加―の3点を挙げた。

 分析結果は21年に東北経済学会誌に掲載されたほか、和田氏が今年6月の経済地理学会で発表した。

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