白河市で高級ブドウのシャインマスカットなど約220房が盗難に遭っていたことが1日、分かった。県内では、ほかにもコメや盆栽など転売目的とみられる盗難被害が相次いでおり、県警や関係者が警戒を強めている。有識者は被害防止に向け、集中的な見回りや関係団体が連携した対応の必要性を挙げる。
白河市のブドウ畑では9月上旬から10月末までに、シャインマスカットを中心に被害があり、管理する30代男性が白河署に届け出た。男性によると、被害額は約40万円という。同署は窃盗事件として調べている。
男性によると、10月31日午前8時ごろ、収穫前の120房がなくなっていることに気付いた。管理する3キロ離れたほかの畑でも9月上旬~10月上旬ごろ、4回に分けて約100房がなくなっていた。枝の部分には、はさみや刃物で切り取られた痕跡が残っていた。男性は「ここまで盛大にやられるとは思わなかった」と肩を落とす。
須賀川市や白河市の農業用倉庫などで10月中旬以降に相次ぎ発生しているコメの窃盗については、中島村でも1日までに同村の60代男性が所有する倉庫から新米コシヒカリの玄米約2.1トン(80万円相当)が盗まれたことが判明。10月25日午前3時ごろ、男性が作業のために倉庫に訪れたところ、扉の窓ガラスの角が割られていることに気付いた。
相次ぐ被害に県内の各JAでは生産者へ注意喚起のチラシを作成して配布するほか、預かったコメの安全確保へ施錠管理や警備保障の再確認などを行っている。また、県警も「情報発信をしながら、警戒に努めていきたい」としている。
「専門知識あったか」
県内では農産物のほか、高級盆栽の窃盗被害も続く。福島市で数千万円とみられる被害が出ているほか、8月に郡山市の盆栽店で五葉松7鉢と真柏(しんぱく)1鉢、鏡石町の培養所では五葉松9鉢が盗まれ、警察に被害届を提出。被害額はそれぞれ数百万円に上るとみられる。
盆栽は海外人気も高く、培養所代表の男性は「ベトナムや中国などに転売されているのではないか。程度のいいものが盗まれており、知識のある人がいて複数人で盗んだのかもしれない」とした。
「人の目」確保が重要
犯罪心理学に詳しい東北大の荒井崇史准教授は、県内で相次ぐコメや盆栽、果物などの窃盗被害防止に向けて「いかに人の目を確保するかが重要」と強調する。
侵入窃盗は一般的に、人目を嫌う。例えば、「犯人側は人通りの少ない場所を狙う。時間帯も、深夜ならば人通りも少なくなるため摘発されるリスクが下がると考える」と指摘。転売を念頭に何が高値で売れるかを考えた上で盗んでいるとし、「皆が寝静まっている間に庭や倉庫に侵入するほうが、住宅に侵入するよりもリスクがより低いと考える」と、人目を避けて、逮捕されるリスクの低い対象を選んで犯行に及んでいると分析する。
防犯対策として、犯人側に警戒させるため、防犯カメラやセンサーライト、「見守りしている」などと書いた張り紙の設置、不定期でのパトロール実施などを挙げた。ただ、これらの対策を農家などが単独で行うには限界があるとし、「地元住民や防犯団体、警察などが協力し、役割分担しながら取り組むのがいいのでは」と提案。その上で、「盗まれる危険性のあるコメや果物などは、収穫から出荷までの期間、特に集中的に見守り活動を行うことも方法の一つ」とする。