日銀の金融政策に政治の圧力が強まっている。これまで金融正常化に肯定的だとみられていた石破茂首相が「追加利上げをする環境ではない」と一転、日銀の利上げ方針にくぎを刺した。衆院選を前に株式市場を冷やしたくない思惑が透けて見え、新政権の閣僚らも同調。政治優先の発言は日銀の独立性を損なう恐れがあり、追加利上げの判断に影響しかねない。
「個人的には、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」。石破氏は2日夜の植田和男日銀総裁との会談後、記者団に話した。3日の外国為替市場の円相場は年内の追加利上げ観測が後退し、前日から一時3円以上下落。日経平均株価の上げ幅は一時1000円を超えた。
閣僚も追加利上げの向かい風となりそうだ。赤沢亮正経済再生担当相は3日、デフレ脱却が最優先だとして「タイミングを間違えて水を差すことはできない」と主張した。
日銀は日銀法によって金融政策の独立性が確保されており、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「首相らの発言は踏み込み過ぎている」と指摘した。