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漢字の世界4 四字熟語
【2006.1.19】
 鶏鳴狗盗(けいめいくとう)

つまらない技でも役に立つ

 犬(狗)にちなむ熟語には、どうもあまり良い意味のものが少ないようだ。

 これは『史記』に見える孟嘗君(もうしょうくん)の故事による。孟嘗君が秦に捕らわれた際、食客(しょっかく)の中に、犬の真似(まね)をして物を盗むのが得意なものと、鶏の鳴き真似を得意とするものがいたおかげで、逃げ出すことができた。

 食客とは、客分(きゃくぶん)として召しかかえている人物。孟嘗君(斉(せい)の国の家老)には3千人の食客がいたという。その中の「鶏鳴」や「狗盗」は、ごくつまらぬ技の持ち主ということだが、そのおかげで助かったので、″つまらぬ技でも役に立つ″たとえにも用いられる。

 「百人一首」の「夜をこめて鶏(とり)の空音(そらね)ははかるともよに逢坂(おうさか)の関(せき)はゆるさじ」(清少納言)はこれによる。

全国漢文教育学会長
石川 忠久 
 

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