手に何も持たない。からて。「拳」は、こぶし。武器を持たず、からてで立ち向かう。転じて、元手(もとで)も頼る者もない、そこから這(は)い上がっていくことをいう。
「徒手」には古い用例はない。宋の蘇東坡(そとうば)に「魚を捕うるを観(み)る」という詩があり、「箔(すだれ)もて長囲(かこみ)を作り、徒手もて得(う)」と、魚を素手で捕まえることを詠(うた)う。
「空拳」は、漢代の用例があり『塩鉄論(えんてつろん)』に「空拳を奮って百万の師し(軍隊)を破る」と見える。武器もなしで百万の敵軍を打ち破った、というのである。
今では、ほとんど裸一貫、何の後ろ盾もなく一代で事業を起こした人、喩(たと)えば松下幸之助さんのような場合が、「徒手空拳」の好例として挙げられるだろう。
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