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漢字の世界332

 

【2007.2.17】
殷鑑不遠(いんかんとおからず)

他人の失敗は自分の戒め

 殷の人の戒めとする手本は、近くの夏かの世にある。転じて、他人の失敗を見て自分の戒めとする。

 前回の「前車之轍」に近い言葉であるが、こちらは古く『詩経』から出る。

 殷鑑遠からず

 夏后の世に在あり(殷の鑑かがみ〈手本〉は遠くにあるのではない。夏の桀けつ王の世にある)
 「鑑」は、かがみ。「夏后」は、夏の最後の王の桀。桀が悪逆無道な政治をして殷の湯とう王に討たれ、夏王朝は滅びた。殷王朝はそのことを鏡として戒めなければならぬ、という句である。

 しかし、その殷も桀と同じ悪王の寸ちゅうが出て、周の武王に討たれ滅びた。周王朝もそうならないよう自戒せよというわけだが、そうはいかないのが人間の業ごうだ。

全国漢文教育学会長
石川 忠久 
 



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