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漢字の世界352

 

【2007.3.14】
人面獣心(じんめんじゅうしん)

冷酷・非情な心を持つ人物

 人の顔して、心は獣。人間と思えない冷酷な心を持つ人物をいう。

 もとは『史記』に見える。「夷狄(いてき)の人、被髪左袵(ひはつさじん)して人面獣心なり」(異民族の人はざんばら髪で着物は左前、人の顔で獣の心だ)とある。「夷狄」は、中国の周囲にいる野蛮な異民族のこと。ここではもっぱら未開野蛮な様子を誇張して述べたもの。

 今日では、人でなし、人非人(にんぴにん)の意味で用いることが多い。義理・人情をわきまえない人間、冷酷・非情な人物をいう。

 似た言葉に「人面狗(く)心」がある。人の顔して犬の心。見かけは立派だが無能ということ。その反対の「狗面人心」もある。容ぼうはまずいが有能、のこと。どちらも『晋書(しんじょ)』に見える言葉だ。 

全国漢文教育学会長
石川 忠久 
 



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