心を無(む)にする。感覚を押し殺す。「心頭」は、こころ。頭は添え字で、心の先、ぐらいの意味。「滅却」は、なくしてしまう。却は去と同じで、消し去ること。
晩唐の杜荀鶴(とじゅんかく)の詩の句より出る。「安禅(あんぜん)必ずしも山水を須(もち)いず、心頭を滅却すれば火も自(おのず)から涼し」(安(やす)らかな座禅(ざぜん)をするためには、必ずしも山水自然は必要ではない。心の働きをなくせば、火でさえも涼しく感ずる)
「火も自ら涼し」は「火も亦(ま)た涼し」ともいう。精神力によってどんな苦痛にも耐えられる喩(たと)え。
甲州の恵林(えりん)寺の快川(かいせん)和尚が、信長の火攻めにあって、この句を唱(とな)えながら焼死した話はよく知られる。
夏の猛暑の日には、この句が口をついて出る。
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