不思議(ふしぎ)な夢。はかないことの喩(たと)え。
『異聞(いぶん)集』という不思議な話を集めた唐代の物語集に見える。唐の淳于芬(じゅんうふん)という男が酔って庭の鬼(えんじゅ)の木の下で眠ると、夢に2人の使者が現れて、鬼安(かいあん)国の南可郡の郡主に任命するという。
郡主にとりたてられてそのまま20年を過ごし、そこで夢がさめた。さめた後、槐の木の根もとを調べてみると、大きな穴があいていて、中に大蟻(あり)がいた。これが夢の中の鬼安国王であった。また1つの穴があって槐の木の南の柯(えだ)に通じていたが、これが芬(ふん)の治めていた南可郡であった、と。
前に紹介した「黄粱一炊(こうりょういっすい)」(3月25日)とよく似ている。この種の話を「伝奇(でんき)」という。小説の源流だ。
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