どこから見ても美しい人。転じて、誰にでも如才(じょさい)なくふるまい、いい顔をする人。
これは人をほめる言葉ではない。「あいつは八方美人だ」といえば、みんなにいい顔をして調子がよい、しかし実(じつ)がない、という非難の語気になる。この語には特に典故はないようだ。
「八方」は、「四方(東・西・南・北)」とその間(乾(けん)=西北・坤(こん)=西南・艮(ごん)=東北・巽(そん)=東南)と、すべての方向、の意になる。
「八方」のつく語でよく使われるものに、「八方塞(ふさ)がり」がある。どこへ行っても不吉な結果になる、何をしてもうまくゆかぬこと。
「八方睨(にらみ)」というと、すべてに目配(めくば)りすること。また、どこからも正面を向いて見える肖像画にもいう。
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