今日は立秋。秋に因(ちな)んだ語を紹介しよう。
「鱸」は、すずきという魚に当てているが、ほんとうはやまのかみという、はぜに似た川魚で、中国の江南に産する。「膾」は刺身さしみ。「蓴羮」は蓴菜(じゅんさい)のあつもの(濃いスープ)。
話は西晋末(3世紀末)のこと。洛陽(らくよう)の都で勤めていた張翰(ちょうかん)は、町に秋風が吹きそめるのを見て、故郷の江南が恋しくなり、「今ごろは鱸魚(ろぎょ)の刺身とじゅんさいのスープがうまくなっただろう」と、すぐに辞職して帰ってしまった。
秋風に誘われるまま、立身出世の道をさらりと捨てて、故郷(ふるさと)の名物の方を取ったという、いかにも風流な話として世に伝わる。
つまり、鱸膾と蓴羮は俗世を忘れさせるご馳走(ちそう)だ。
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