「蜀犬日(ひ)に吠(ほ)ゆ」と読む。蜀(四川省)の地は山に囲まれ、またよく霧がたちこめるので太陽があまり出ない。たまに出ると犬が怪しんで吠えつくということ。転じて見識の狭い者が優れた人の立派な言行に対して、それを疑い、非難・攻撃することに喩(たと)える。
唐の韓愈(かんゆ)の文に基づく。「蜀中山高く霧重おもく、日を見る時少すくなし。日の出(い)づるに至るごとに則すなわち群犬疑いて之(これ)に吠ゆ」(蜀の地は山が高く霧が深く、日を見ることが少ない。日が出るたびに多くの犬が怪しんで、日に吠えつく)とある。群犬が怪しいものに吠えつく、というのは古く『楚辞』に出る。この語は前回の「井底之蛙」や82回の「夜郎自大」とも近い意味だが、人に吠えつくだけ質たちが悪い。
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