前にも後にも例がない。非常に珍しいことの喩(たと)え。
「前を空(むな)しうし後を絶(た)つ」と読む。『宣和画譜(せんながふ)』(宋代に編纂(へんさん)された画家の伝記)に見える呉道子(ごどうし)(道玄(どうげん))の評に「顧(こ)は前に冠たり、張(ちょう)は後を絶つ。而(しこう)して道子は兼ねて之(これ)を有す」(顧愷之(こがいし)は前に比べられるものがなく、チョウソウヨウは以後に比べられるものがない。そして呉道子はこの両者を兼ねる)という。これが出典だろう。
顧愷之(東晋・4世紀)もチョウソウヨウ(梁・6世紀)も人物画の大家。呉道子(唐・8世紀)はそれ以上、という評価である。その「孔子像」はことに有名。
この語に近いものに「前代未聞(ぜんだいみもん)」(これまで聞いたことがない)があるが「空前絶後」の方は例文のように、褒(ほ)める意味が強い。
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