長い浜辺と曲がりくねった入江。海辺の良い景色。
これも日本独特の景色で、四字熟語としての中国の用例は見ない。2字の「長汀」「曲浦」はよくある語。
「長汀」は、六朝の謝霊運(しゃれいうん)の詩に「万里長汀に瀉(そそ)ぐ」(万里の遠くまで川の流れが浜辺に注いでいる)とあり、「曲浦」は、初唐の王勃ぼつの文に「曲浦に蓮肥(はすこ)ゆ」(くねった入江に蓮の花がたくさん咲いている)と見える。「汀」はみぎわ、浜辺。「浦」は入り江、うら。
それぞれが川や湖の情景を描写するのに用いられている。海の景色ではない。
わが『太平記』に「長汀曲浦の旅の路、心を砕く習いなるに…」とあるのは、まぎれもなく海辺の情景だ。
中国の海は地の果て、だから海の表現は少ない。海の語は日本の専売特許だ。
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