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漢字の世界272

 

【2006.12.06】
歯亡舌存(は ほろびてしたそんす)

弱いものの方が長持ち

 硬い歯が抜けても軟らかい舌は残る。強い(硬い)ものより、弱い(柔らかい)ものが長持ちする喩(たとえ)。

 『説苑(ぜいえん)』(漢の劉向(りゅうきょう)の書)に春秋時代の話として、叔向(しゅくきょう)という人物が、「臣は年八十なり、歯墮(お)ちて舌尚(なお)存す、老たん言えるあり、天下の至柔(しじゅう)は天下の至堅(しけん)を馳騁(ちてい)せしむと」(私は八十歳になりました。歯は落ちたが舌はまだ残っています。老子は”天下の最も柔らかいものは天下の最も堅いものを使役する”と言っています)と述べている。「墮」(おちる)は「亡」(なくなる)と同じ意味。

 『老子(ろうし)』を見てみると「柔弱は剛強に勝つ」とあり、この話を裏付ける。

 「柳に雪折れなし」という日本の諺(ことわざ)もある。一見弱そうなものが却(かえ)って強い。 

全国漢文教育学会長
石川 忠久 
 


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