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双葉移住し憧れの農業 福島出身・黒津さん、夢への第一歩

08/29 08:17

キャベツの苗を植える黒津さん。「早く双葉の人々に食べてもらいたい」と話す

 双葉町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)にある農地で今月、福島市出身の新規就農者黒津今日子さん(34)が野菜の作付けを始めた。「双葉町の人たちに早く食べてもらいたいな」。人けのない広大な遊休農地でぽつんと一人、慣れない手つきで農機具を操りながら孤軍奮闘する。

 福島市の実家は果樹農家、飯舘村の祖父母も農家で、農業は幼少期から身近にあった。山形大農学部を卒業後、一度は鉄道会社に勤務して安定した職に就いたが、憧れだった農業への道を諦め切れなかった。昨年10月、双葉町での事業展開を計画していた石川県の農業生産法人「安井ファーム」に入社した。黒津さんはその事業の担当社員として双葉に移り住み、町民になった。

 「農業ができて、福島の復興にも貢献できる。自分の夢への第一歩だ」。今月から前田地区の農地70アールでブロッコリーやキャベツ、ニンジンなど野菜の栽培を始めた。しっかり実はなるのか、放射性物質は検出されないか―。本年度は試験的な栽培になるが、事業化に向けて将来的に栽培面積を拡大させる考えだ。

 双葉町は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による全町避難を経て、30日で復興拠点の避難指示解除から丸2年を迎える。町によると、1日現在の町内居住者数は135人で、このうち帰還者が64人、移住者が71人。黒津さんも、新しく生まれ変わろうとする町の一員に加わった。

 26日、黒津さんはキャベツの苗の定植に取りかかっていた。「うねが曲がっているのは撮らないでくださいね」。野菜の初収穫は早ければ11月にも迎える。今月上旬にまいたニンジンの種は、畑から青々とした葉が顔をのぞかせた。「かわいいでしょって、町民に写真を見せて回ってるんですよ」。双葉に芽吹いた新しい命をめでる日々に、幸せを感じている。(渡辺晃平)

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