大倉　智社長コラム〈96〉選手の髪色　黒髪で真面目な姿体現

　いわきＦＣの選手は全員黒髪。茶髪は禁止している。その理由を説明するには、クラブ設立の理念の話にまでさかのぼらなければならない。

　クラブを設立する際、「人づくり、まちづくりに貢献できるフットボールとは何か」ということについて深く考えた。そして、東日本大震災からの復興に向けて歩むこの地域の人々の生き様に連動するのは、「９０分間止まらない、倒れない」プレーであり、「魂の息吹くフットボール」であるとの結論に至った。

　では、それを実現する選手はどのような選手だろうか。そこで頭に浮かんだのが、本来の黒髪で一生懸命、真面目にサッカーをする選手たちの姿だ。「魂の息吹くフットボール」を体現するのはそのような選手たちだろうという考えに行き着いた。

　獲得したい選手と初めて会った時、選手はみんな茶髪で現れるので、そこで「茶髪はだめだよ」と説明する。その後選手は美容室などに行き、久しぶりに黒髪になった自分を鏡で見て、いわきＦＣのチームの理念を体現しようと覚悟を決めるのだと思う。茶髪禁止は時代にそぐわないという意見もあると思うが、こうした覚悟を決めるプロセスが大事だと考えている。

　業界では「いわきＦＣの選手は真面目に頑張る」というブランドが確立されてきているが、その要因の一つに選手の黒髪というのがあると思っている。選手は個人事業主なので自分で自分の価値を上げていかなければならない。ほかの選手との違いを見せることが大事で、今はほとんどのＪリーガーが茶髪だから黒髪は大きなアピールポイントになっているのではないか（笑）

　「倒れるまで走る。黒髪の若者」。このブランドを、選手自身も大事にしてもらいたい。

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　おおくら・さとし　川崎市出身。早大商学部卒。現役時はＪリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでＦＷで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレＧＭ、社長などを歴任し、２０１５年１２月から現職。５５歳。