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石破茂さん地方豊かに 自民・新総裁選出、福島県民から注文

09/28 07:30

双葉町の伊沢史朗町長から復興の現状などについて聞いた石破さん=15日、JR双葉駅前
新総裁に選出された石破さんを映し出したテレビが並ぶ売り場=27日午後、福島市・ケーズデンキ福島南本店

 27日に自民党総裁に選出された石破茂さんは、10月1日の臨時国会で第102代首相に指名される。本県は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興が途上で、物価高騰や人口減少対策、経済活性化などの課題も抱える。豊かな生活に向けて県民は、石破さんの手腕に注目している。

 物価高、人口減少「希望を」

 郡山市の大学生鈴木大翔(ひろと)さん(21)が注目するのは日々の生活に直結する物価高騰対策だ。「特に高くなっていると感じるのはガソリン代。自分の財布の中で占める割合が増えている」と嘆く。1人暮らしをする友人の中にはコメや卵など食品の価格高騰に頭を悩ませる人も多く「あまり自由に使えるお金がない学生にとって、生活に必要な物の値段を抑えてくれる取り組みを期待したい」と語った。

 福島高2年の八木沼愛莉さん(17)は「若者が未来に明るい希望が持てるような社会をつくってほしい」と期待を込める。金融や経済に興味を持つ八木沼さんは、日頃ニュースを見て、将来年金が十分にもらえるか不安になったという。「今の社会福祉がこの先も同じように続くとは思えない。医療や教育支援も含めて、若い人が安心して生きられる世の中になってほしい」と願った。2人の息子を育てる郡山市の会社員猪股成郎(まさお)さん(43)は人口減少問題を踏まえ「少子高齢化や人手不足などの対策を優先的に進めてほしい」と語った。

 超高齢化社会を見据えた対策を求める声もある。会津若松市の病院職員大戸高広さん(63)は、92歳の母親を介護の末にみとったばかりで「家庭によっては、医療費や介護サービスの利用料だけで月の年金額を超えることもあるだろう」と話す。高齢者の医療や介護の自己負担の増額が不安だとし「弱い立場の人に寄り添った政治を期待したい」と注文を付けた。

 湯川村でコメなどを栽培している農業鈴木正之さん(71)は、高齢化などを背景に農家が後継者不足にあるとし「現役の農家も子どもに農業を勧めることができない。減反して田んぼを減らすのではなく、その分のコメを輸出に回すなど、未来に希望が持てる世の中にしてもらいたい」と農業の振興を望んだ。

 自民党派閥裏金事件を含む「政治とカネ」の問題を巡り、政治に対する国民の信頼回復も急務だ。いわき市のNPO法人ままはーと理事長の笠間真紀さん(48)は「『国を良くしたい』という心意気を持った若者が増えてほしいのに、逆に無関心層を増やすような政治になっていないか」と警鐘を鳴らす。

 重症心身障害児(重心児)の息子がいる笠間さんは、多機能型重心児者デイサービスを運営するNPO理事長を務める。「これからは風通しの良い政治になればいい」と述べた上で、自ら声を上げられない弱い立場の人に目を向ける政治も大切だとし、「障害児の生活など、普段社会から見えにくい部分に思いを致す『優しい政治』を実現してほしい」と切望した。

 復興、廃炉「前進させて」

 困難が続く福島第1原発の廃炉作業や地域振興など本県復興の道のりは遠く、石破さんに課せられた課題は大きい。

 「誰が首相になっても、処理水の海洋放出を安全に進めてもらうのは当然のことだ」。相馬双葉漁協の原釜機船底曳網船主会長松本浩一さん(69)は強調する。昨年8月24日に処理水の海洋放出が始まって以降、大きな風評被害は見られないが、気の抜けない状況は続く。「廃炉がいつまで続くか想像つかないが、最後までしっかりとやってもらいたい。そうでなければ、漁師は安心して仕事を続けることができない」と語った。

 富岡町の秋元菜々美さん(26)は、廃炉作業や中間貯蔵施設の県外最終処分などを課題に挙げ、「政治家は福島が抱える問題を理解し、解決に向けて前進させてほしい」と訴える。

 同町出身の秋元さんは観光や教育、芸術関係の事業に携わる。移住定住事業や観光ツアーでは、参加者から原発事故関連の質問が多く「不安を抱く部分があるのだろう。現時点で正解がない問題は、説明が難しい」と語る。特に廃炉作業の道のりは遠く、「山積する課題の責任は若い世代が負う。将来、判断できるように、国民が福島に関心を持ち続けるようにしてほしい」と求めた。

 山口県出身で東京都から移住した南相馬市鹿島区の狩野菜穂さん(50)は、子どもたちによる歌とダンスの団体「トモダチプロジェクト」の代表を務める。浜通りを中心に公演の企画に携わる中「地方は本当に人がいない。都会とは差がある」と印象を語る。浜通りの活性化に向け「福島でも頑張っている人がたくさんいる。地方で頑張っている人がいることを忘れないでほしい」と話した。

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