双葉町教委は5日、東京電力福島第1原発事故による全町避難などの影響で荒廃が進み、使用できなくなった双葉中とふたば幼稚園の旧校舎・園舎の見学会を開いた。両施設ともに解体が決まっており、最初で最後の一般公開となる。震災当時の姿を残す学びやを訪れた卒業生は「私の人生をつくった場所だ」と懐かしみ、母校へ思いをはせた。見学会は6日も開かれる。
中学校の3階図書室には、地震による揺れで棚が倒れ、散乱した本がそのまま残されていた。
当時3年生で卒業式当日に震災に遭った朝田優さん(28)=東京都=にとって図書室は、毎日のように過ごした思い出の場所だった。「放課後も休み時間もずっといた。卒業式の日に本を返したのも覚えている。懐かしさしかない」。目に涙をため、感慨深げに色あせた本を見つめた。
震災から13年がたち、卒業以来初めて訪れた母校だった。朝田さんは懐かしさに触れた一方で「怖い」という感情も湧き起こったという。「自分はこの13年で年を取ったのに、本や黒板はそのまま。本当だったら、新しくなっていないといけないものが残っていることには、怖さも感じた」と震災の現実も直視した。
跡地に義務教育学校
中学校は解体された後、跡地に認定こども園や義務教育学校が整備される構想となっている。卒業生の田中恵太さん(29)=東京都=は教室を巡り、思い出に浸りながら「解体はしょうがないとも思う。ただ新しい学校になっても、子どもたちが、自分たちのように楽しい思い出をつくれる場所になってほしい」と願った。
震災前の双葉中の生徒数は220人で3学年9クラス、ふたば幼稚園の園児数は130人で年少、年中、年長に各2クラスあった。現在はいわき市に幼稚園と小中学校合同の仮設校舎が設けられ、授業が行われている。双葉中の旧校舎は年度内に校舎内の整理を行い、来年度以降に解体に入る見込みだ。