県内の神社で神鏡や太鼓、鈴などの神具が盗まれる被害が相次いでいることが16日、関係者への取材で分かった。寺院でも仏像、仏具の窃盗被害が発生しており、県警は金属製品を狙った犯罪グループによる犯行の可能性もあるとみて調べている。
「代々受け継がれてきた御神鏡だ。早く捕まってほしい」。神鏡2枚が窃盗被害に遭った本宮市の和田神社の森淳宮司(55)は切実な声を上げた。気付いたのは10月27日。秋季例大祭を前に掃除しようとした時だった。拝殿と本殿の台座にあるはずの神鏡がいずれもなくなっていた。
森宮司によると、拝殿の正面は南京錠で施錠されていたが、何者かが拝殿の後ろにある本殿の柵を乗り越え、拝殿後ろ側の扉をバールのようなもので強引にこじ開けて侵入した形跡があったという。森宮司が前日に訪れた際は不審な点はなかったという。郡山北署本宮分庁舎に被害を届け出た。
関係者によると、被害に遭った多くの神社は都市部から離れていたり、人目につきにくい場所にあったりする。三春町の高木神社では、太鼓の革を留める金属部品などが盗まれたという。このほか二本松市東和地区の神社でも、神鏡やさい銭が盗まれる被害が確認されている。
二本松でも仏像盗難
二本松市東和地区の2カ所の寺では、市指定有形文化財の仏像1体を含む複数の仏像が盗まれていたことも16日、関係者への取材で判明した。
このうち二本松市太田の岩蔵寺薬師堂では10月上旬、秋の祭礼準備で訪れた関係者が気付いた。施錠していた南京錠がなくなっていた。市指定有形文化財の仏像1体が盗まれた別の寺でも10月上旬に被害が発覚した。
身分確認せぬ業者に売却か
県内各地で銅などの金属製品を巡る窃盗事件が相次いでいることから、県警は警戒を強めている。ある捜査関係者は「銅などの価格高騰を背景に、売却目的で盗んでいるのではないか」と話した。
銅は導電性の高さから、車や電化製品、半導体など多くの製品に利用されている。県北地方の金属リサイクル業社によると、世界的な需要の高まりなどから銅の取引価格は近年上昇。過去数十年で最も高い水準にある。この業者は、1回当たり10万円、月に30万円を超える買い取りをする際は身分確認をしており、担当者は「不審に思う持ち込みは取引を拒否している」とした。しかし「身分確認をしない業者もいると聞く」と実情も明かした。
ある捜査関係者によると、多くの業者は金属製品を買い取る際に身分確認をしているものの、身分確認を徹底していない業者もいるとみられる。金属窃盗の犯人らは転売の形跡が残らない業者を選び、売っている可能性がある。