【3】全てが新しく始まった エッセイスト・大石邦子

02/10 08:30

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父母の写真は自宅のどの部屋にも飾っている。会うことはかなわないが、見つめていると、語りだしそうな気がする

 病状はなかなか、回復の兆しを見せなかった。その頃、本郷一中の校長だった父は、本郷から会津若松までのバスの定期券を買い、学校が終わると毎日病院まで通ってきた。ベッドの脇に座ると、いつも私を見つめていた。  けれど、絶対に私とは目を合わせない。目が合ってしまうと、父の目にみるみる涙がにじんだ。そして「父ちゃんが百までも生きて、お母ちゃんとおまえの面倒をちゃんと見て、それから父ちゃんは死ぬんだから、何...

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