【4】胸にともった小さな光 エッセイスト・大石邦子

02/11 08:30

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あの頃の私は自分で起き上がることもできなかった。目が開けていられないほど、疲れ果てていた

 病状が回復をみない中、1年、2年と過ぎていった。そんなある日、主治医の先生が新聞の切り抜きを持ってきた。  「あなたより、よっぽど重症な人だよ。あなたにも作れるだろう。あなたには右手があるじゃないか」。そこには、全身まひで寝たきりの女性が短歌を作っているという記事が載っていた。  先生の言葉は、私に高校時代の記憶をよみがえらせた。石川啄木の短歌の読後感を書くテストだった。めったに褒められたことの...

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