福島大共生システム理工学類の筒井雄二教授(同大災害心理研究所長)らの研究グループは、福島市に住む母親と子どもを対象に、東京電力福島第1原発事故後の精神的健康の変化を調べた結果、原発事故から11年後の2022年にも、抑うつや放射線不安などの症状が見られたとする論文をまとめた。29日までに国際誌に公開された。
研究グループは、同市に住む3~12歳の子どもとその母親延べ1万685組を対象に、2011~16年の6年間と、11年後の22年に継続調査を実施。母親に対し、原発事故に起因する自身の精神症状や子どもの行動に関する計25項目の質問に選択肢を示して答えてもらい、「全くない=0点」「頻繁にある=3点」などと回答を点数化して分析。鹿児島、福井、兵庫、秋田、東京の5都県の母子に対する調査結果と比較した。
その結果、抑うつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神的症状の点数は時間の経過とともに低下が見られたものの、総じて5都県の母子よりも高く、11年後にも症状が見られた。母親の放射線不安に関する指標でも同様の傾向がみられた。筒井氏は「原発事故から10年以上が過ぎても、低線量地域の母子に精神症状や放射線不安が続いている」と述べた。