東日本大震災で得た教訓を被災地復興の力に―。白河市の精肉店が都内の団体と連携し、県産食材を使用した缶詰を開発した。震災の被災者から災害時の食の充実を望む声を聞き、食材と味にこだわった防災用の缶詰を考案。能登半島地震と奥能登豪雨の被災地に届け、被災者らを励ました。関係者は「贈って備える、美味(おい)しい愛」を掲げ、普及を目指す。
「日常でも災害時でも『いつ食べてもおいしい』ことが重要だと気付かされた」。缶詰開発に携わった精肉店「肉の秋元本店」専務の秋元雅幸さん(44)は話す。
秋元さんは2017年ごろから震災の被災地などで食産業の復興に取り組む「東の食の会」(東京都)と連携。新たな事業を模索する中で、被災地の事業者から「避難所で同じものを食べてばかりで飽きてしまった」という声を聞いた。「それなら災害時に食に関する心の支えになるものを作ろう」と思い、昨年1月に贈答用の防災食プロジェクト「LOVE CAN(ラブキャン)」を発足させた。
第1弾として、ブランド豚「白河高原清流豚」のひき肉を使ったハンバーグの缶詰を開発。白河高原清流豚や白河市産のトマトを使ったミネストローネも開発した。秋元さんは「地元の食材を使うことで、地域の第1次産業の活性化につなげたい」と笑みを浮かべる。
能登へ届け好評
東の食の会のメンバーらが今年10月、ボランティア活動のため地震と豪雨で被災した石川県穴水町周辺に行き、完成したばかりの缶詰を届けたところ、「おいしい」といった声が聞かれたという。「食が被災者の力となり、復興の一助になれたらうれしい」と秋元さんは喜ぶ。
プロジェクト名には、大切な人を思う「愛(ラブ)」に加え、缶詰の「缶」と英語の助動詞で「できる」という意味の「CAN(キャン)」の音をかけている。「大切な人に贈り、もしもの時の備えをしてもらう。誰かを思う『LOVE(ラブ)』の気持ちで喜ぶ顔が見たい」。秋元さんは力を込めた。