借金を返し終えると、週末は劇場にこもりきりになった。 休館から10年がたっていた。掃除をしたり、映写機に油を差したり、フィルムの手入れをしたり。劇場で自分の時間を過ごすことが多くなった。 「私と劇場どっちが大事なの」。3人の娘がいた私は、妻にそう詰められることもあったが、黙ってやり過ごした。劇場にいる時間は不思議と心が落ち着いた。 昭和50年代になると、映画産業は完全に下火になり、映画館の...
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