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古里と共に未来へ 富岡・猪狩さん「地元に貢献、じいちゃんみたいに」

2025/03/12 08:55

亡き祖父を思い、古里で生きる決意を固めた猪狩さん=富岡町

 東日本大震災から14年となった11日、県内各地で追悼の祈りがささげられた。

 「生まれ育った富岡で生きていく」。富岡町小浜出身の会社員猪狩考平さん(36)は、同町の富岡川の河口近くで亡き祖父の鎮魂のため手を合わせた。祖父の功さん=当時(73)=は津波にさらわれ、今も行方は分からない。「じいちゃんみたいに、町のため、人のために貢献したい」と復興途上の古里に誓った。

 功さんは長年、富岡川鮭繁殖漁協で組合長を務めてきた。考平さんは真面目で優しい祖父が誇りだった。考平さんが富岡一小時代から和太鼓演奏に打ち込むと、イベント時はいつも見に来てくれた。今も幼なじみと一緒に太鼓チーム「小浜風童太鼓」のメンバーとして演奏するのが生きがいだ。

 双葉高から日本大工学部に進学。震災時は卒業目前で友人と浪江町にいた。地震後、自宅に急いで帰ると、沿岸部の自宅は2階まで浸水していた。避難所で家族と会えたが、功さんは海に近いサケ養殖場に発電機を運んでおり、そのまま津波に巻き込まれたとみられる。「最期まで仕事をやり遂げようとしたんだ」。そう思っている。

 考平さんは原発事故でいわき市に避難し、浜通りの復旧工事に取り組んできた。昨年、富岡町の企業「ふたば」に就職し、富岡川漁協の組合員にもなった。年内には町内に新居を構え、同町出身の妻と帰還する予定だ。「復興は課題山積だけど、みんなで協力しないと進まない。富岡で暮らし、町のためになりたい。じいちゃん、心配しないで見守ってくれよ」

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