東日本大震災から14年の節目を迎えた11日、県内では犠牲になった親友らに思いをはせ、祈りをささげる人の姿が見られた。
「無念だっただろう」 猪狩さん夫妻、古里富岡で
「突然の災害で亡くなった人は無念だっただろう。安らかに眠ってほしい」。猪狩友良(ともよし)さん(68)、聡子さん(78)夫妻は避難先の郡山市から古里の富岡町の海を訪れ、犠牲者の冥福を祈って海に花を手向けた。
聡子さんは津波で同級生を亡くした。「亡くなった人のことを思うと、自分が今ここに存在していることを申し訳なく思う時もあった。それでも毎日祈り続けてきた」と14年の月日を振り返り、静かに手を合わせた。
友良さんは震災後から東北などの被災地を巡って復興に携わる仕事に励み、2月に退職した。「震災から14年、初めて3月11日に海に来て手を合わせることができて良かった」と話した。
慰霊碑にそっと手を 下枝さん、浪江の霊園訪ね
葛尾村の自営業下枝宏通(ひろみち)さん(32)は、友人2人と浪江町請戸の大平山霊園を訪れた。慰霊碑に刻まれた親友の吉田裕紀さん=当時(18)=の名前を見つけると、そっと手を当て、思いをはせた。
下枝さんと吉田さんは村内の同じ行政区で育ち、幼い頃から仲が良かった。高校も同じ小高工だったため、毎朝一緒に通学する間柄だった。
2011年3月1日に高校を卒業し、中学校の同級会を翌日に控えた11日に震災が起きた。吉田さんは就職先に通勤するため買った車で友人と浪江町を訪れていた。
大きな揺れの後、友人と住民を車に乗せ、海から離れた内陸の避難所に送り届ける避難誘導を自主的に行っていた際に、津波にのみ込まれたという。
下枝さんは「同級会の幹事をやってくれていた。同級生の中で一番まとめてくれる存在だった」と回顧し、亡き友に祈りをささげた。