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東日本大震災直後は双葉署長...警察の仕事と経験伝える 福島学院大非常勤講師に

2025/04/15 09:55

福島学院大で学生たちに警察官の職務を伝える菅野さん
双葉署長を努めていた頃の菅野さん。川俣分庁舎に据えられた署長の執務机のそばには、殉職した同署の警察官3人の遺影が掲げられた

 元県警刑事部長で、東日本大震災直後に双葉署長などを務めた菅野年幸さん(66)は4月から、福島市の福島学院大で非常勤講師として、警察行政の仕組みや、震災での自らの経験を学生に伝える授業を始めた。菅野さんは「震災、原発事故に警察官が立ち向かったことを語り継いでいきたい」と話している。

 菅野さんは、2011年5月に双葉署長に着任。当時は東京電力福島第1原発事故の影響で、管内は避難指示区域などに指定されており、双葉署は福島署川俣分庁舎の道場を拠点にしていた。菅野さんは着任後、自らの執務机の近くに、震災で避難誘導中に殉職した双葉署の警察官3人の遺影を掲げた。「彼らの前では、半端なことはできない」と気を引き締めた。

 在任中は毎日のように防護服をまとって、住民が避難していた管内に通った。「制服を着たのは、離任する間際になってからだった」と振り返る。悔しさをかみしめることもあった。住民が避難先で亡くなったことに「原発事故さえなければ、古里を離れて死ぬこともなかったのに」と唇をかんだ。

 だが、住民に寄り添おうとする署員の姿に、うれしさがこみ上げてくることもあった。ある署員は自宅に近づけない避難者のために、付近の映像を撮影し、様子を知らせた。「住民のために何ができるのか、と署員は一人一人が自分で考えようとしていた」と振り返る。

 3年生対象に授業

 4月から始まった授業は、マネジメント学部の3年生が対象。14日の授業では菅野さんが警察官の業務について解説し、学生から寄せられた「警察官の採用試験は」「巡査長の役割は」といった質問に答えた。震災の体験は全15回行われる授業の後半で話す予定。菅野さんは「警察官がどんな思いで仕事に取り組んでいるかを、若い人たちに知ってほしい」と語った。

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