大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」(NHK総合夜8時)で白河藩主・松平定信役を演じる井上祐貴さん。「寛政の改革」で出版統制を強化し、主人公の蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星さん)の活動にも大きな影響を及ぼす役柄だ。定信の幼少期を演じた寺田心さんからバトンを受け、今夜放送の第30回から本格的に出演する井上さんに思いを聞いた。
「早口」で個性追究
井上さんが大河ドラマに出演するのは、2023年放送の「どうする家康」以来2作目になる。「(時代劇特有の)歩き方や座るときなどのちょっとした所作の部分で、前回の経験が活(い)きていると感じます。自然と体が思い出してくれる感覚です」
今回演じる定信の印象を聞くと「一言でいうと『面倒くさい人』」。「なんでそういう言い回しとか言い方をするんだろうって思うことがすごくあります」。今作で描かれる定信は早口なキャラクターだという。「定信が早口だったという史実があるわけではないのですが、定信のオタク気質な部分を追究した『べらぼう』チームが考えた定信の個性の一つです」
理屈っぽくて堅物な定信を演じるが「嫌いにならないで」と笑う。
田沼への感情刻む
出演にあたり、定信が白河藩へ養子に出される前の田沼意次とのシーンを何度も見返したという。田沼の策略で白河へ行くことになった定信の、田沼に対する恨みや怒りの感情は、「その後の定信を演じるうえで自分の中に焼き付けておこうと何回も見ました」。
田沼役を演じる渡辺謙さんとの共演については「初対面の日にあいさつすると、『あっ、お前か~(定信役は)』みたいな軽い感じで、緊張をほぐしてくれました。役の上ではバチバチですし、緊張感もありますが、芝居を離れるとすごく気さくに話しかけてくださいました」。
主演の横浜流星さんとは同年齢だ。「同い年だからこその(共通する)感覚や感性もあると思うので、コミュニケーションが取れるタイミングがくればいいなと思います」と共演に期待を寄せる。
定信は寛政の改革で蔦重らの活動を厳しく取り締まる「敵役」として描かれることになる。「統制する一方で、定信には町民文化への愛情や思いもあり、その葛藤が描かれている。そこを大切に演じたい」と意欲を見せる。
白河藩で功績、自信に
先頃、NHKの番組「歴史探偵」(総合テレビ20日夜10時放送予定)に出演した際、白河の人たちが定信について語る映像を見て、定信の印象が変わったという。「白河の人たちの間では、定信は僕が思っていた以上に支持されていた。硬くてまっすぐで不器用というイメージだったが、好きなことには没頭するような人間味のある一面も見えました」
「白河藩での功績を心に秘め、それを自信にして改革に挑む定信の思いを伝えたいと思っています。僕にできることを全力でやりますので、応援よろしくお願いします」
歴史探偵 大河ドラマ「べらぼう」コラボ特番
20日夜10時からNHK総合。
田沼意次と松平定信を取り上げる。長谷川平蔵宣以を演じる中村隼人さんが白河市を訪れ、定信の意外な一面が浮かび上がる。定信の少年時代を演じた寺田心さんは静岡県の相良を訪ね、意次の賄賂疑惑の真相を調査する。スタジオには井上祐貴さんと、徳川家治役の真島秀和さんが登場する。