上生菓子やまんじゅうなど古くから伝わる和菓子の名物が多い会津に、異彩を放つきらびやかなようかんがある。切るたびに断面が変化する「Fly Me to The Moon 羊羹(ようかん)ファンタジア」は、約180年の歴史がある会津長門屋(会津若松市)の人気商品だ。社長の鈴木哲也さん(52)は「素材のおいしさを生かした、遊び心のある和菓子」と紹介する。
羊羹ファンタジアは2017年に発売された。きっかけは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故だった。鈴木さんは「高速道路のパーキングエリアで福島のお菓子が捨てられていた。そんな状況を変えたくて、これまで福島で培ってきた技術を生かした商品を作ろうと思った」と当時を振り返る。
最大の特徴は、切るたびに断面に違う絵柄が現れる点だ。シャンパン風味の錦玉羹(きんぎょくかん)やレモンようかんを小豆ようかんで挟み、月の満ち欠けや羽ばたく鳥の姿などストーリー性ある絵柄を表現している。表層の小豆ようかんの中には鬼クルミやクランベリーが入っていて、切る場所によって味や食感の変化が楽しめる。
パッケージは浪江町出身の日本画家舛田玲香さんの描き下ろしで、カラフルな鳥や月で羊羹ファンタジアの世界観を表現している。鈴木さんは「箱が美しく、多くの人の目に留まる機会ができた」と話す。
鈴木さんによると、そのまま食べてもおいしいが、冷やしたり、お酒と合わせて食べたりするのもお薦めだという。「見て、食べて楽しめるお菓子。贈り物はもちろん、いろいろな場面で食べていただきたいです」
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会津長門屋 会津若松市川原町2の10。電話0242・27・1358。本店と七日町店(同市七日町)のほか、県観光物産館(福島市)やうすい百貨店(郡山市)でも販売している。店のオンラインショップからも購入可能。