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日本代表の守護神、浪江で恩返しの就農 元福島ユナイテッド・山本海人さん

2025/09/30 07:20

新米の出荷作業をする山本さん(左)と佐藤さん。山本さんは「福島の米のおいしさや農業の魅力を発信して恩返しがしたい」と語る=29日、浪江町立野

 サッカー元男子日本代表のゴールキーパーで、昨シーズンを最後に福島ユナイテッドFCで現役引退した山本海人さん(40)が、福島県浪江町でコメ作りに挑戦している。「強い体を作るのに福島の米に助けられた。そのおいしさと安全性をたくさんの人に知ってもらい、恩返しがしたい」とセカンドキャリアの一つとして農業を選んだ。21年間の現役生活で感じた「食の大切さ」を今度は作り手として伝えていく。

 浪江町立野の農家佐藤秀和さん(53)の作業場に29日、山本さんの姿があった。Jリーグ通算274試合に出場した守護神が手にはめているのは、ゴールを守ったキーパーグローブではなく軍手だ。2人は一緒にコメ作りに取り組んでおり、この日は新米の出荷作業を行った。もみすりが終わった玄米を慣れた様子で袋詰めし、身長188センチの長身をかがめながら、約30キロの袋を何度も運んで汗を流した。

 福島Uでは「農業部」でも活動していた山本さん。洋梨の栽培に関わったほか、2024年は部次長を務め、コメや果物、野菜の栽培・収穫の統括役を担った。農業への関心が高まる中で出会ったのが、福島Uのアカデミーでバスの運転手をしていた佐藤さんだった。

 佐藤さんは、東京電力福島第1原発事故を経て、23年から先祖代々の浪江町の農地でコメ作りを始めていた。2人に農業を接点としたつながりができると、佐藤さんが思いを打ち明けた。「浪江の農地を再生させたいんだ」。食に支えられてきたアスリートとして「何か力になりたいと思った」と山本さんの心が動いた。農業部の活動とは別に個人で、昨年の田植えから佐藤さんの水田でコメ作りに携わり、引退後も続けてきた。

 昨年に収穫したコメの一部は、山本さん自ら販路を探して今月に「海人米」(天のつぶ)として県内のコープふくしま各店で売り出し好評を得た。今年収穫した新米も海人米として販売する計画だ。

 浪江の農地にはアスリートを呼び、農業の魅力や現状を伝えていくことも考えている。「食と密接に関わるアスリートだからこそ農業の大変さを知ることが大切だと思う」と山本さん。「農業を通して福島の食の輪も広げていきたい」とアスリートと農業をつなぐ土壌を耕していく。

 ユーチューブでコメ作りを発信

 山本さんのコメ作りの取り組みは「あしたのにわ」と題したユーチューブチャンネルとインスタグラムで発信している。動画は、福島Uの選手として活躍した金(キム)弘淵(ホンヨン)さんとチームスタッフだった青木遥さんが手掛けている。

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