県や生産者団体などでつくる「ふくしまプライド。」販売力強化会議が、県産農林水産物の新たな販売方針を策定した。東日本大震災後から続く風評に終止符を打ち、流通市場で本県の農林水産物の強みを生かしたシェアを獲得していくことが重要だ。
本県の販売方針は長年、東京電力福島第1原発事故が引き起こした消費者の本県農産物への忌避感を払拭することに重点を置いてきた。徹底した安全性の確保や県外キャラバンなどにより、国の実態調査で県産品の購入をためらうと回答した人の割合は、近年は5%前後にまで低下している。
しかし、かつて関東地区の小売店の2割強で扱われていた県産コシヒカリが、現在は1割に満たない店でしか販売されないなど、震災前の水準に戻っていない事例は少なくない。県は小売りや卸売り、外食などの流通に関わっている業者が、消費者の反応を過大に見積もり、県産品を取り扱わない傾向があることが課題とみている。
このため新方針では県単独、年度単位だった枠組みを多様な団体による2026~30年度の5年間の形に変え、流通機構への働きかけを強化する。ただ、手法が従来のままでは壁を突破するのは難しい。県と生産団体は、取り扱いに理解がある県外企業などの協力を得ながら、流通の各段階にきめ細かく県産品の魅力を伝え、販売量拡大につなげなければならない。
コメの場合には震災後、風評の影響などで流通先を業務用へ転換することを余儀なくされた。しかし、現在は流通量の約7割が業務用となり、関係企業から定評を得た外食・中食産業を支える産地として注目されている。品質は高く、一般消費用よりは少し低い価格帯の「値頃感」が、市場での武器になっている。
物価高の中では、各品目のトップブランドの売り込みに加え、県産品の価格帯を逆手に取り、業務用への流通を積極的に狙うのも選択肢の一つだ。震災後に培った安全確保のノウハウも売りになる。県や生産団体が企業との連携を深め、農業法人などが一定の価格水準で複数年契約を締結できるような環境を整えてほしい。
昨年は高温による他産地の出荷減で、県産のリンゴやナシが求められて販売価格が高まった。本県はサクランボから始まりモモ、ブドウ、イチゴと、四季を通じた果物の出荷ができる利点がある。産地間のバランスで生じた販売枠確保の機会を捉え、継続的な取引に結び付ける試みを強化することも求められる。
