福島市土湯温泉町の伝統こけし工人陳野原幸紀さん(76)の作品が、第69回全国こけし祭りのコンクール最高賞の文部科学大臣賞・全国こけし祭り会長賞に輝いた。県内から最高賞の受賞者が出たのは2016年以来8年ぶり。
陳野原さんは20回以上参加してきたが、最高賞を受けたのは初めて。「驚いたが、自分の作品を評価してもらえたのはうれしい。土湯こけしの魅力を発信できたかな」と達成感をにじませた。
宮城県大崎市で8月31日と今月1日に開かれたコンクールには、土湯系こけし工人佐久間粂松(くめまつ)の1940(昭和15)年ごろの作品を再現した「粂松型」の伝統こけしを出品した。審査で「自然でけれん味のない自身のこけしになっている。粂松の魅力を十二分に再現しながら、これだけ衒(てら)いも作為も見せない作品には驚きを禁じ得ない」と高く評価された。
陳野原さんは兄の故和紀さんの下で修行し、74年にこけし工人になった。現在、土湯系のこけし工人は6人で、年々減少している。だからこそ「伝統と伝承を受け継がなければならない」と陳野原さん。伝統こけしの技術を次の世代に伝えながら、こけしの魅力を広く伝えようと新しい形のこけし作りにも挑戦している。「地域の財産を守るために、これからもこけしを作り続ける」と覚悟を語った。
ほかの本県関係受賞者次の通り。
▽宮城県観光連盟会長賞=佐藤誠孝(いわき市)
▽河北新報社賞=野矢里志(郡山市)
▽NHK仙台放送局長賞=柿崎文雄(猪苗代町)
▽仙台放送賞=佐藤裕介(いわき市)
▽宮城テレビ放送賞=佐藤英之(同)
▽エフエム仙台賞=瀬谷幸治(猪苗代町)
▽玉造商工会長賞=関根由美子(須賀川市)
美轆会28、29日最後の展示会
陳野原さんが発起人となり、東北6県のこけし工人が集い、技術向上へ交流活動を続けてきた「美轆(みろく)会」が今年、30年余りの歴史に幕を下ろす。
最後の展示会が28、29の両日、福島市の土湯温泉観光交流センター「湯愛舞台(ゆめぶたい)」で開かれる。時間は午前10時~午後4時(最終日は同3時)。入場無料。