ありふれた物の中に宿る美しさが不意に青年の心に幸福感をもたらした。梶井基次郎の代表作「檸檬(れもん)」は、憂鬱(ゆううつ)な気持ちで街をさまよいながら果物店でレモンを購入した主人公の心の動きを描く ▼絵の具をチューブから搾り出して固めたような単純な色、丈の詰まった紡錘形―。主人公は、以前からその美しさに引かれていたレモンを手にし「総(すべ)ての善いもの総ての美しいものを重量に換算してきた重さ」な...
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