福島県福島市の市街地でサルの目撃情報が相次いでいる。市によると、10月31日~今月11日に23件の目撃情報が寄せられた。被害の報告はないものの、住民からは不安の声が上がる。専門家は、目撃されたサルは複数個体で群れを離れた「はなれザル」との見方を強め「見かけても刺激せずにその場を離れることが大切」と注意を呼びかけている。
市に寄せられたサルの主な目撃場所は【地図】の通り。市によると、10月31日~今月8日に、同市の郷野目や南町、鳥谷野を中心に19件の目撃情報が続いた。9日には少し離れた泉や南沢又などでも確認。サルは2匹以上いて、いずれも体長約40~50センチ。市街地では3年ほど前に県庁周辺で確認されていたが、今回目撃された地域では確認されていなかった。
市は目撃場所を車で巡回して警戒するなど対策を講じている。担当者は「今後は状況を見て捕獲に力を入れていくかどうかなど検討する」と話した。
今回のサルの目撃に市民は不安そうな表情を浮かべる。南町の斎藤清民さん(82)は自宅の庭のカキの木にサルがいるのを目撃したという。「木の上で2匹がカキを食べていた。襲われたとかではないから怖くはなかった」としながらも「近くに学校もあるし、子どもが襲われる可能性も」と不安を吐露した。目撃場所から近い清明小は下校時、複数の教諭らが通学路周辺を警戒しながら巡回するなど対策を取る。
10月末にサルが目撃された渡利のさくら保育園では、職員にサル対策のマニュアルを渡し、子どもたちにもサルに近づかないように伝えているという。安彦孝園長は「できるだけの対策をしていく」と心がける。(高田泰地)
子ども、高齢者狙われる恐れ
福島大食農学類の望月翔太准教授(40)は「繁殖が終わって群れから離れた若い雄ザルではないか」と分析する。群れによって差はあるが通常繁殖期は10月ごろから始まる。その時期に別の群れに向かうサルを「はなれザル」と呼ぶという。
近年全国的にサルの数は増えており、はなれザルが市街地で目撃される件数も増えている。はなれザルの移動距離は10~20キロほどで今回目撃された個体は福島市の庭坂あるいは隣接する川俣町などから来て、移動の途中の可能性もある。今回市街地に現れたサルは「今の段階での危険性は高くない」と話す。通常、はなれザルは1カ月ほどで新たな群れに合流するなどして市街地から離れる。ただ、1カ月を過ぎても離れない場合は捕獲など具体的な対策を考えた方がいいという。
サルは一度餌を与えると人間を「餌をくれる生き物」と認識し、襲いかかる可能性もあるため「見かけても近づいたり、餌をやったりしないでほしい」と呼びかける。また「大人の男性と、子どもや高齢者を見分けて力の弱い方を狙う」と指摘。サルが現れても無視し、万が一被害が出そうな時は大きな音を出して追い払うことの必要性などを訴える。