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【7月7日付編集日記】琥珀

07/07 07:45

 日本に古来根付く色の表現はまさに多彩。紫一つをとっても江戸っ子に愛された青みのある江戸紫に、紫染めの伝統を紡ぐ赤みがかった京紫、高価な染料の代用品を使ったことで生まれた似紫などがある。とても覚えきれないほどの細やかさが、文化に奥行きを与えてきた

 ▼古くは「くはく」「赤玉」などと呼ばれて珍重された宝石に由来するのは、琥珀(こはく)色。語源の琥珀は主に針葉樹から流れ出た樹脂が固まり化石になった。装飾品として見ることがもっぱらだが、中に昆虫が閉じ込められているものもある

 ▼県立博物館の主任学芸員、猪瀬弘瑛さんらが、約8700万年前の琥珀から出てきたハチの仲間が新種であることを突き止めた。体長はたった0.4ミリ。顕微鏡をのぞきながらの研究といい、聞くだけで気が遠くなる

 ▼いわき市は国内有数の琥珀の産地。海外では、琥珀の中からトカゲや鳥の頭、恐竜の尾などが見つかっていて、いわきでもまた新しい発見があるかもしれないと猪瀬さんは語る

 ▼琥珀の中から恐竜のDNAを採取しクローンを作り出すという映画のような話は、現在の研究ではあり得ないことらしい。それでも、黄褐色の宝箱に多彩な夢が詰まっているのは確かだ。

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