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【7月8日付編集日記】失敗する未来像

07/08 08:05

 英仏が開発し、1976年に就航した超音速機コンコルドは、極端に燃費が悪かった。座席が少なく飛ぶほどに赤字が膨らむにもかかわらず、2000年の墜落事故などを機に引退に追い込まれるまで運用された

 ▼その理由は巨額の開発費などが投じられ、やめるにやめられなかったからだ。飛び続けた先にある失敗を想像し、執着を捨てていれば、人命までは失われなかったはずだ(山崎裕二「先にしくじる」日経BP社)

 ▼東京電力福島第1原発の核燃料デブリを、試験的に取り出すための準備が最終段階に入った。投入される「釣りざお式」装置は、過去に原子炉内の堆積物をつかんだ実績がある。新たに開発されたロボットアームの採用を見送った点で、東電は執着を捨てられたと言える

 ▼山中伸介原子力規制委員長も、準備が順調に進んでいることに期待を寄せているようだ。デブリを取り出せるのかもしれない。ただ、この13年余りで幾多の失敗を重ねてきた東電である

 ▼釣りざお式なら大丈夫だという思い込みはないだろうか。見通しや想定の甘い計画は、わずかなミスで破綻する。過去の実績もいったん捨てて、失敗する未来像をひたすらイメージしなければ、成功はない。

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