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【7月9日付編集日記】ノーフューチャー

07/09 08:10

 パンクロックを代表するバンド、セックスピストルズが、当時斜陽のささやかれていた英国に「ノーフューチャー(未来はない)」と、若者の鬱屈(うっくつ)した思いを歌って半世紀近く。しかし、その英国はいまだ先進国の席に納まっている

 ▼ある作家と、ひょんなことからこの話題で盛り上がった。メディアの多様化などで小説も新聞もかつてほど売れていない。まさにノーフューチャーの状況。英国よろしく生き残るにはどうすればいいか話し合った

 ▼小説の方は最近、少し明るいニュースがある。ガルシア・マルケスの長編「百年の孤独」が初めて文庫化され、人気を集めている。福島市の書店では早々に売り切れ。元から売られている、倍以上の値段のハードカバーが棚に置かれていた

 ▼ある村に根付いた一族の百年にわたる盛衰を描いた作品。急に主要人物が空に飛んでいってしまうなど、不思議な世界観に引き込まれる。出版不況とはいえ、良いものは売れるというのを示しているようで心強い

 ▼作家と記者の達した結論も「諦めず良いものをつくり続ける」。数年先百年先の未来がないならば、まずは未来そのものを全力でつくっていかねばなるまい。小説も新聞も、そしてこの国も。

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