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【震災13年5カ月】家具作り、再びこの地で 楢葉・宏昇製作所

08/11 11:35

自慢の家具をPRする宏昇製作所の社員ら=楢葉町

 震災と原発事故後、浜通りでは新たな企業の進出に加え、避難後に再び古里に戻って再起する企業など産業復興の動きが進んでいる。国や県はイノベーション・コースト構想を掲げ、医療や廃炉などさまざまな分野の産業集積を図る。ただ産業復興に伴う地元への効果・恩恵は道半ばで、国や県の試行錯誤は続く。

          ◇

 楢葉町南工業団地に立地している木製家具製作の「宏昇(ひろしょう)製作所」は、オフィス家具やオリジナル家具を製作している。東日本大震災前から同町で操業していたが東京電力福島第1原発事故の影響で移転し、再び帰還した歴史を持つ。そこには「必ず戻る」という福島への強い思いがあった。

 同社は1961年の設立で、木製家具の企画・設計・製造・販売を手がける。東京都渋谷区に本社を置いたが、生産拡大のために90年に同町に生産拠点を移転し、社業を積み重ねた。震災や原発事故で生産は止まったが、2カ月後にはさいたま市に空き工場を見つけて製造を再開した。

 同社は福島への帰還方針を持ち続け、2019年3月に同町の工場を再開させた。帰還を機に自社ブランドを強固にしようと、スタイリッシュでデザイン性の高い家具の製造に注力した。その中には県産材にこだわり、「常磐杉」を使った「UBUSUNA」シリーズ、本県を象徴する観光地や産品をイメージした配色の椅子「キャリースツール」シリーズなどが生まれた。

 同社木工部の亀田昌哉さん(33)は「地域に根付いて新しい家具を作るやりがいを感じている」と語る。再開に伴って本県に移住した亀田さんは「木材加工や布張り、塗装などの職人がものづくりに取り組める良い職場だ。福島の環境に貢献できる家具作りを進めたい」と意気込む。


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