国会議員、党員はその重責を自覚し、選挙の顔ではなく、この国のかじ取りを担うに最もふさわしい人物を選ぶ必要がある。
自民党総裁選が告示された。パーティー裏金事件を受けた派閥の解消の流れに伴い、現行制度となった1972年以降で最多の9人が立候補する異例の混戦だ。当選12回のベテランや40代の若手、女性など、幅広い選択肢が示された点は評価できる。一方、候補者が多いことで、政策を国民に丁寧に説明する機会や時間が十分確保できないのではとの懸念もある。
まずは「政治とカネ」を巡り失墜した政治への国民の信頼をどう取り戻すか、その道筋を具体的に示すことが重要だ。一部の候補者は、使途公開が不要の政策活動費の廃止などを打ち出している。しかし、野党が廃止を求める企業・団体献金については踏み込んだ発言はなく、裏金事件の実態解明にも消極的な姿勢が目立つ。
最近の国会は政治とカネを巡る問題に終始し、重要な課題と向き合う時間が失われている。政治の安定には、こうした現状を打開することが不可欠だ。各候補者は抜本的な改革案と、それを実行する決意と覚悟をみせてほしい。
景気や物価高、年金・医療、人口減少、防災など国民生活に直結する課題が主な争点となる。次の国政選挙を見据え、国民受けする政策を唱えるだけでなく、政権政党としてこれまでの取り組みを検証することが重要になる。
政策を展開する上で財源の問題や、今後の財政健全化の取り組みについても議論を深めるべきだ。
憲法改正や選択的夫婦別姓などへの対応は候補者間で主張に違いがある。世論を二分するような重要なテーマについては、国民に分かりやすく説明してもらいたい。
1回目の投票は国会議員票367票と地方票367票の合計で争われる。しかし今回は1回目で過半数を獲得する候補者が出ず、上位2人による決選投票になる公算が大きいとみられる。
決選投票は議員票の比率が高いため、政策論争から離れ、旧派閥単位の動きが復活するとの指摘もある。利権や人事が複雑に絡み、「数の力」による旧態依然の総裁選となれば、党勢は回復できないことを肝に銘じるべきだ。
これまでの各候補者の発言などを聞く限り、東日本大震災と原発事故からの復興について具体的な発言が影を潜めている。福島市で15日に候補者の演説会が開かれる。本県の現状や課題を的確に把握し、復興を加速させる具体的な施策を示すよう求めたい。