国際機関の提言を基に、除染土の県外最終処分にどう現実味を持たせていくのかが問われる。
国際原子力機関(IAEA)が、東京電力福島第1原発事故に伴う県内の除染で出た土壌の再生利用や最終処分に向けた環境省の取り組みは「安全基準に合致している」と評価する最終報告書を公表した。ただ、これまで県内で行われている再生利用の実証事業などから、除染土の安全性は既に確認されており、織り込み済みともいえるものだ。
報告書には評価と併せて、処分に向けてさまざまな意見、提言が盛り込まれている。例えば国民の理解醸成については、安全確保に向けてどのような規制を行うのかなどを明確にすることが重要との見解を示している。報告書で重視すべきは安全性のお墨付きよりむしろ、これらの提言だ。
IAEAは除染土の再生利用について、その手順を本年度中に策定予定の技術ガイドラインに盛り込むことが重要との考えを強調した。除染土を使った道路などの構造物は、責任が明確となるよう公的機関の管理を原則とすべきであることなどにも言及している。
県外での実証事業は地元の反発からいずれも実施できていないが、本県で行われている実証事業では、安全確保に向けた知見の蓄積があり、環境省の有識者会議がまとめた除染土の安全管理の基準案などに反映されている。これらの知見を基に安全確保の手順などを含めた実効性の高いガイドラインにしていくことが求められる。
県外最終処分については、環境省が包括的な戦略を定めることが必要と指摘した。自治体に最終処分場の受け入れを求める際には、交付金などの財政的な支援の明示に加え、地域社会の活性化に向けた後押しなど、さまざまな要素も含めるべきだとの見解も示した。
IAEAは最終処分場の立地などについてさまざまな選択肢を検討する必要があるとし、国民の理解醸成や、立地先の住民など、利害関係者の意見が反映される仕組みの強化などを求めている。処分場の立地選定などは県外の実証事業よりもさらに難航が予想されるが、その取り組みは立地選定に先立つ安全対策の基準案をまとめた段階にとどまっている。
法に定めた処分完了期限の2045年まで残り約20年となっており、IAEAも「厳しいスケジュールだ」と言及している。期限内の完了には、提言を踏まえ、選定に向けた動きをより具体化していく以外ないことを、国は肝に銘じるべきだ。