石川県の能登半島が記録的な豪雨に見舞われた。元日に最大震度7の大地震が発生し、甚大な被害があった現地は、河川の氾濫や土砂災害などが起き、各地で住宅が浸水した。土砂崩れに巻き込まれるなどして亡くなった人、行方や安否が分からない人がいる。
発生から丸3日が経過した現地では行方不明者の捜索活動が行われている。何より大切なのは人命だ。国、自治体は不明者の救助に全力を挙げてほしい。
能登半島では大地震からの復旧作業が続く中、秋雨前線や低気圧の影響で線状降水帯が発生し、観測史上最大の大雨が降った。地震で被災した輪島市のトンネル復旧工事現場では土砂が流出し、複数の作業員が犠牲になった。数カ月を経てようやく上下水道が復旧したにもかかわらず、施設が破損し再び断水している区域もある。
復旧作業や生活再建に奮闘するさなか、またも大きな災害に巻き込まれた住民らの失望感、喪失感は想像に難くない。被災者に心を寄せ、物心両面で励まし、支えていくことが大切だ。
能登半島は道路や河川の堤防などのインフラが脆弱(ぜいじゃく)で、地震直後は物資の輸送が停滞した。医療関係者やボランティアも現地に入れず被災者支援は後手に回った。
今回も各地で道路網が寸断されており、いまだ孤立している集落がある。国、自治体は地震の教訓を生かし、人の移動や物流の手段を早急に構築し、被災者支援や応急復旧に取り組む必要がある。
見過ごせないのは、地震やその直後の火災で住居を失った人が暮らす仮設住宅で床上浸水が発生したことだ。避難所での生活を経て、新たな生活の場を得た人にとって二重の苦しみといえる。
石川県内では約7千戸の応急仮設住宅の建設・入居が進められている。しかし一部に土砂災害や洪水、津波による浸水などのリスクが懸念される区域があることは指摘されていた。安全な場所に建設したくても、適した用地が不足していることが背景にある。
仮設住宅などの用地選定の重要性が浮き彫りになった。引き続き台風や豪雨が懸念される時期が続く。仮設住宅や建設現場の安全確認と防災対策が急務だ。
自然災害の頻発、激甚化が指摘されており、短期間に複数の災害に遭うリスクはどの地域もある。復旧中の斜面や堤防などが壊れることで、より深刻な事態を招いてしまう。国をはじめ自治体は住民の命、暮らしを守るためにも複数の災害の発生を想定し、防災や減災に取り組まなければならない。