メタボリック症候群になると心筋梗塞や狭心症などを発症しやすくなり、元気に自立した人生を送れる健康寿命が短くなる恐れがある。県民一人一人が健康づくりへの関心を高め、病気のリスクを回避することが重要だ。
厚生労働省の最新の調査で、2022年度にメタボに該当した県民の割合が、過去最悪の19.5%となった。都道府県別では前年度と同じワースト4位だった。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を契機に悪化したメタボ率が改善せぬまま、新型コロナウイルス禍での運動不足や精神面の不調などで生活習慣が乱れ、深刻化した形だ。仕事や私生活など置かれた環境の変化に伴うストレスを、過食などで紛らわしている人は少なくないだろう。
人の体には慢性のストレスによって脂肪をため込む性質がある。メタボ該当者や予備軍と診断された人は、食事や運動など生活習慣の改善に加え、ストレスを緩和することが急務だ。
メタボの人はそうでない人よりも、塩分の取り過ぎによる生活習慣病のリスクが高くなる。メタボの解消と同時に、県民の食塩過剰摂取の改善が喫緊の課題となる中、県や市町村、企業、県栄養士会などでつくる「ふくしま減塩推進ネットワーク会議」が8月に発足した。会員企業の食品会社や小売業者は、適切な塩分量の総菜などの開発、販売に取り組む。
健康に関心の薄い層の生活習慣を改善するためには、購入した総菜が結果的に減塩商品であるような環境整備が欠かせない。ただ県内の小売店では、通常の商品と比べて販売スペースが狭く、目立たないケースが多い。商品の選択肢も少ないとの指摘がある。
食品会社や小売業者による取り組みの余地は十分残っているとみるべきだろう。ネットワーク会議は、減塩商品で食生活改善の好循環を生み出す仕掛けづくりに知恵を絞ってほしい。
県民の健康づくりを10年以上にわたり先導している県と、住民の保健指導などを担う市町村にも看過できない状況がある。共済組合に加入する県職員の22年度のメタボ率は17.0%で、全国ワースト1位だった。県内の市町村職員の割合も県と同水準で、全国平均を上回る状況が続いている。
個人の健康の維持や増進に加え、高齢化に伴い増加する社会保障費を抑制するためにも健康づくりが重要であることは、自治体職員ならよく理解しているはずだ。県や市町村は、職員の現状にも危機意識を持つ必要がある。