【9月28日付社説】自民総裁に石破氏/政治への信頼取り戻せるか

09/28 08:05

 派閥の裏金や旧統一教会の問題で失われたのは自民党だけではなく、政治そのものへの信頼だ。どのようにして信頼を取り戻し、国内外の課題に有効な手だてを講ずることができるようにしていくかが問われる。

 自民党総裁選は、石破茂元幹事長が高市早苗経済安全保障担当相らを破り、当選した。石破氏は来月1日召集の臨時国会で首相に指名される。

 石破氏は当選後、「国民を信じ、勇気と真心を持って真実を語り、日本をもう一度、皆が笑顔で暮らす、安全で安心な国にするために力を尽くす」と述べた。

 政権を取り戻した2012年以降、自民は裏金問題をはじめ、国民への説明責任を重視すると言いながら、実質的にはそれを軽んじる姿勢を続けてきた。さまざまな問題について説明責任を徹底できるかが、自民が変化し、再生に進んでいるかの指標となる。

 総裁選の決選投票では高市氏を上回ったものの、最初の投票は議員票に限れば3位だった。石破氏は農相や防衛相などの閣僚を務め、党でも幹事長や政調会長の要職に就くなど政治経験は豊富だが、党内での基盤は弱い。そのなかで、いかに党内を掌握して、指導力を発揮できる基盤をつくれるかが最初の焦点だ。

 石破氏は総裁選期間中、政治への信頼回復に向け、政治資金をチェックする第三者機関の設置や、政党交付金の使途明確化などに意欲を示した。一方で、総裁選終盤には、唯一継続している派閥のトップ、麻生太郎副総裁に支援を要請したとみられる。また、決選投票での石破氏への票の流れにも旧派閥など、グループ単位の動きがあったとみるのが自然だろう。

 旧派閥が党運営や政権運営に影響力を持ち続けるのであれば、旧態依然と言わざるを得ず、抜本的な改革は期待できまい。石破氏は総裁選で掲げた公約の実現や透明性の高い人事を通じ、派閥の弊害解消を国民に示す必要がある。

 石破氏は福島市で開かれた演説会で、人口減少への対応として地方の活性化に力を入れるとしたほか、省への格上げを前提に防災庁を創設する考えを示した。しかし本県の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に向けた言及は、ほかの候補と比べても希薄だったのは否めない。

 政権復帰後の自民は濃淡こそあるものの、本県の復興を重点課題に掲げてきた。石破氏にはいま一度、本県の状況に目を向け、復興加速に向けた考えを示すよう強く求めたい。

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