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八溝山は「宝」深掘り 金採れた歴史発信、観光資源へ有志らPR事業

09/29 09:50

砂金採り体験イベントで、砂金を探す参加者=8月、塙町真名畑

 福島、茨城、栃木3県にまたがる八溝山(やみぞさん)(1022メートル)で行われていた金採掘を3県の観光資源にしようと、有志がPR事業を始めた。福島県塙町での砂金採り体験などを通じて金採掘の歴史を発信し、交流人口の拡大を図る。有志の代表を務める茨城県笠間市の自営業白土淳さん(65)は「新たな観光の核を見いだし、地域を盛り上げていきたい」と意気込む。

 バシャバシャ―。「なかなか見つからないね」「これ金かな?」。8月下旬、塙町の八溝川などで開かれた砂金採り体験イベント。親子らが川の中に入り、泥を専用の受け皿に入れ、少しずつ水で洗い流して砂金を探した。「この辺で金が採れるという話を聞いたことはあったが、実際に体験するのは初めて。鉱物を好きになる窓口としてもいい」と矢祭町の押田美樹さん(43)。参加者の中には、実際に砂金を見つけて喜ぶ姿もあった。

 企画したのは、金採掘の歴史を発信しようと白土さんや友人が組織した「八溝ゴールドプラン実行委員会」。白土さんによると、八溝山では750年ごろから金が採掘されていたという。

 835年ごろに陸奥国司が砂金の採取量の増大を祈ったところ、例年の2倍の金が産出。遣唐使派遣費用の助けになった歴史があったという。その後も採掘は続き、1570~1615年ごろ盛んに採掘されたとの歴史もある。八溝山周辺には採鉱にちなんだ地名も多く塙町などでは採掘跡も見つかっているという。

 「過疎化や少子高齢化が進む中、自分に何かできることはないか」と考えていた白土さん。金を採掘していた歴史のある八溝山に注目し、現地調査や聞き取り調査、各地の図書館などで調べたところ、本県のほか、茨城県大子町や栃木県那珂川町などで金を採掘していた事実が分かった。パンフレット作成などの周知活動を行いながら7月に実行委を組織。砂金採りイベントの開催にこぎ着けた。

 キャラ制作構想も

 「金を採掘していたという歴史を広め、地域活性化につなげたい」と意欲を見せる白土さん。今後は砂金採り体験のほか、イメージソングやPRキャラの制作なども考えているという。「可能ならアニメなどを制作し、金採掘の歴史を若い世代に広く知ってもらえるように挑戦していきたい」。八溝山地域の新たな魅力を掘り起こす取り組みは、始まったばかりだ。(伊藤大樹)

     ◇

 八溝山 山頂に八溝嶺神社、中腹には坂東三十三観音霊場の第21番札所の日輪寺が鎮座し、修験の山、黄金の山として信仰されてきた。八溝山がある奥久慈県立自然公園の特別地域では鉱物や土石の採掘が禁じられている。砂金採り体験イベントは関係者に許可を取って行われた。白土さんは「金の採取が禁止されている場所もある。自治体や管理者に確認し、指示に従ってほしい」としている。

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