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復興の道じっくりと、双葉、浪江を散策 浜街道トレイルウオーク

09/30 07:31

海沿いの風景を見ながら防波堤を歩く参加者=浪江町・請戸漁港付近

 浜通りの海沿いなどを歩く「ふくしま浜街道トレイルウオークinふたば・なみえ」は29日、双葉、浪江の両町で開かれた。浜通りで進んでいる地域再生の現状を広く知ってもらおうと初めて企画され、県内外から約90人が参加した。参加者は涼やかな天候の下、潮風に吹かれて爽やかな汗を流した。福島民友新聞社の主催。

 ふくしま浜街道トレイルは、新地町からいわき市に至る約220キロに設定された長距離の散策路で、浜通りの自然や歴史、復興の歩みなどを感じることができる。今回のルートは両町のまちづくりの拠点や震災遺構などを巡る約13キロ。参加者は思い思いのペースで歩きながら、道々に広がる風景の中に両町の復興のこれまでの歩みや将来の展望を感じ取っていた。

 トレイルウオークは、浜通りなど15市町村の交流人口拡大を目的とした広域イベント「HAMADOORI CIRCLE 2024」の一環として開催された。双葉、浪江両町の後援、浅野撚糸(ねんし)双葉事業所、ふくしま浜街道トレイルアソシエーションの特別協力、キリンビバレッジ東日本統括本部、まちづくりなみえの協力。

 被災地の現状再生を実感

 双葉、浪江の両町で29日に行われた「ふくしま浜街道トレイルウオーク」では、参加者が歩くというゆったりとした時間軸の中で、東日本大震災から13年半が過ぎた被災地の現状を見聞した。「前とこんなに変わったのか」「思っていたよりも店ができていた」。地元の関係者から話を聞きながら、急ぎ足で通り過ぎるツアーでは感じられない気付きに向き合い、歩みを進めていた。

 双葉町の浅野撚糸(ねんし)双葉事業所を出発した参加者は、企業立地が進む中野地区からJR双葉駅に向かい、駅前で地元の行政区長を務める高倉伊助さん(68)から双葉の復興の状況などを聞いた。須賀川市の吉成真知子さん(70)は「空き地はあるけど、駅西の公営住宅の整備や企業の呼び込みは頑張っていると感じた。数年後にまた自分の目で確かめに来たい」と語った。

 双葉駅から浪江駅までは常磐線に乗り、浪江駅前から新町通りなどを通り「道の駅なみえ」を目指した。楢葉町の渡辺澄江さん(62)は「道の駅なみえには来ていても、まちなかを歩くことはなかった。意外に飲食店ができていた」と、着実に進んでいる地域再生を実感していた。参加者は道の駅なみえで昼食休憩を挟んだ後、太平洋岸の請戸地区へと歩みを進めた。

 請戸川の河川敷沿いに海に向かい、請戸漁港から津波被害の甚大さを伝える震災遺構「請戸小」と、児童らが津波から逃れた大平山などを遠望した。会津坂下町の山本裕司さん(67)は「震災当時は浜通りからの避難者を体育館で迎え入れたが、実態はテレビで把握する程度だった。実際に訪れてみて、本当に大変だったんだと実感した」と、13年半前の被災とそこから得られる教訓に思いをはせた。

 海沿いの道をたどり、復興祈念公園の整備が進められている双葉町の沿岸部を視察し、浅野撚糸双葉事業所に戻った。仙台市から訪れた寺野明さん(75)は「青空の下で海も空気もきれいだった。復興はまだこれからかもしれないね」と述べた。南相馬市の松崎貴文さん(38)は「復興祈念公園も浪江の駅前も、景色はこれから全然変わってくるのだろう」と語り、13キロのウオーキングを通じて未来へ進む両町のエネルギーを感じていたようだった。

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